智慧の扉

2010年5月号

心の雨漏りの対処法

アルボムッレ・スマナサーラ長老

感情は勝手に生まれて、雨漏りするように自分の心に漏れ出します。油断していると、我々の心は欲・怒り・怠けといった汚れた感情で水浸しになってしまいます。

そんな時、我々がすべき仕事はたった一つしかありません。「確認」です。「いま怒りが出ている」「いま興奮している」云々と、自分の感情を淡々と確認するのです。それはいわば、雨漏りにバケツを添えた状態です。雨漏りしても、バケツで受け止めれば大きな問題にはならないのです。

最初はお手上げかもしれませんが、根気よく確認を続けると、感情の管理ができてきます。雨漏りの数が減るのです。そうしたら、次に屋根をしっかり葺き替える作業に入れるのです。

我々が陥りがちな間違いは、感情を抑えたり、感情と戦ったりすることです。感情を潰そうと踏ん張っても上手くいきません。雨漏りしている天井をぶん殴っても、さらに雨が漏れてしまうようなもの。感情と戦うことも「怒り」です。自分の心の悪とは戦わないで下さい。必要な仕事は確認だけ。

それで不安ならば、「行為には気をつけよう」と心に言い聞かせることです。樹木から葉を摘んだら、もう二度と元に戻せないように、自分もいったん行為をしたら、取り返しがつかない。だから行為をする前に、気をつけよう。そう心に刻むことで、悪から守られます。

感情が漏れてきたら「確認」です。何か間違ったことをしそうになったら、体と心を一旦停止して、落ち着くまで何もしない。その対処法を続けることで、徐々に屋根が吹き替えられて、ついには覚りの智慧を完成するのです。