智慧の扉

2017年1月号

仏道とは「こころの掃除」です

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 マイホーム(my home)という単語があります。日本語で実家という意味とはちょっと違います。実家は親の家ですが、マイホームは、「自分の家」という意味です。みなさんは、マイホームを持っていますか? 勘違いしないでください。どこかの建物がマイホームではないのです。本当のマイホームとは、自分がどこに行こうが関係なく、いつでも自分が住む場所をいうのです。自分を養って、育てて、幸福にしてくれる家です。すべての生命が、いつでも自分と一緒で、肉体が老いて死んでしまっても離れないマイホームを持っています。このマイホームのことを、仏教では「こころ」というのです。
 
 皆様は、マイホームをきちんと掃除していますか? 掃除を怠っていませんか? 人間はマイホームを見事にゴミ屋敷にしています。ほんとうにゴミしか置いていないようです。ゴミの山に埋もれて生きるのは楽しいですか? ゴミにはあらゆる細菌や、ゴキブリやウジムシといった虫たちが寄ってきます。そんなマイホームは嫌でしょう。
 
 私たちは、こころの掃除をさぼっているのです。こころにあるのは、怒り・憎しみ・嫉妬・恨み・物惜しみ・欲や不安といった暗い思考ばかりで、せっかくのマイホームも傲慢・頑固・自我というゴミに埋もれているのです。人間の生き方はなぜ大変になっているのか? なぜ悩み苦しみばかりで幸せになれないのか? 楽しく穏やかにいられないのか? 答えは一つ。こころが汚れているからです。
 
 こころが汚れて困っているくせに、私たちはこころを清らかにすることが大キライなのです。しっかり生きる方法を教えてあげると、たいてい反発されます。でも、こころというマイホームを放置して、幸せに生きることは不可能です。そして、自分のこころをきれいにできるのは自分だけ。幸福になるためには、どうしても自力で頑張らなければいけないのです。ですから、ブッダは「Sacitta (サチッタ) pariyodapanaṃ (パリヨーダパナン) 己 (おのれ) のこころを清らかにしなさい」と説かれたのです。

 仏道とは、こころの掃除なのです。お釈迦さまは、こころというマイホームをピカピカにする方法、そして二度と汚れないようにする方法を教えてくれます。こころの掃除が完成した時、私たちは究極の幸福(解脱・涅槃)に達するのです。この人生でこころの掃除を終えられるよう、日々、励んでいきましょう。