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2022年2月18日

『サンユッタニカーヤ 女神との対話 第一巻』サンガ新社

サンユッタニカーヤ 女神との対話 第一巻
アルボムッレ・スマナサーラ(著/文)
発行:サンガ新社
A5判 384ページ 上製
定価 4,500円+税
ISBN978-4-910770-00-0

真理を探求する女神たちの質問に、お釈迦様が鮮やかに答えてゆく!

パーリ経典『相応部』 の智慧を人生に活かす

人類に長く読み継がれてきた初期仏教経典『サンユッタニカーヤ(相応部)』。その冒頭に収録されている「女神との対話」の第一経から第三十一経までを、パーリ語注釈書に添いながら丁寧に解説。さらに、ブッダの教えが現代人の生きる指針として役立つように大胆な新解釈を提示する!

目次

■葦の章 Naḷavaggo

1 The method of crossing the torrent of suffering
激流の渡り方―苦を司る煩悩の激流
度暴流経 Oghataraṇasuttaṃ

2 Unconditional detachment
解脱を知っているでしょうか?―存在欲の根絶で解脱に達する
解脱経 Nimokkhasuttaṃ

3 The life is a moment long
死が迫っているので無駄に過ごす暇はない―寿命の長さは瞬間です
導引経 Upanīyasuttaṃ

4 Claws of time
時間という津波―時の流れとは破壊の流れ
「時は過ぎ去る」経 Accentisuttaṃ

5 Breaking the shackles of mind
自由への道―人は束縛されていることに気づかない
「どれだけを断つべきか」経 Katichindasuttaṃ

6 Life in the self-created dream world
あなたは寝て夢のなかに生きている―心が目覚める方法
覚醒経 Jāgarasuttaṃ

7 Abyss of views
心を閉ざす見解のアリ地獄―見解の罠を破って覚醒者になる
不洞察経 Appaṭividitasuttaṃ

8 Mind is tethered to views
意見は異見を生み出す―真理を知らない人は異見の迷路を彷徨う
迷乱経 Susammuṭṭhasuttaṃ

9 Love of self nullifies your practice
実らない修行と実る修行―慢を避けて気づきに励む
「高慢を愛する人」経 Mānakāmasuttaṃ

10 Radiance of life
美しく生きる―真の輝きは清らかな心です
森林経 Araññasuttaṃ

■歓喜の園の章 Nandanavaggo

11 Wealth stands against happiness
愚か者は贅沢自慢する―富豪は不幸の元
歓喜経 Nandanasuttaṃ

12 World vision vs Buddha’s vision
比類なき人格者―みな苦を楽だと錯覚している
「喜び」経 Nandatisuttaṃ

13 Discovering the best
最高のものを探すなら―世間的思考と真理
「我が子が最高なり」経 Natthiputtasamasuttaṃ

14 Who is the best?
首長の座を決める―人気より能力が優先
王族経 Khattiyasuttaṃ

15 Sound pollution and sound addiction
静けさが怖い―好まない音だけ騒音公害と認定する過ち
鳴動経 Saṇamānasuttaṃ

16 Self stands against self-realization
聖なる道を閉ざす障害―悪魔の役目を果たす己の心
惰眠経 Niddātandīsuttaṃ

17 Difference between practice and ritual
理性がないと人生は出口のない迷路―形式的な修行は危険
至難経 Dukkarasuttaṃ

18 Live peacefully in this stormy world
過酷な世界で安穏に生きる―恥じらいは幸福のキーワード
慚経 Hirīsuttaṃ

19 My home & Homelessness
生命にはマイホームが必ずある―束縛が存在を形成する
庵経 Kuṭikāsuttaṃ

20-1 Time illusion
時は隠れて分からない―理性ある人はチャンスを逃さない
サミッディ経 Samiddhisuttaṃ

20-2 Effable and ineffable
「知る世界」と「語れる世界」―修行者は認識範囲を破る
サミッディ経 Samiddhisuttaṃ

■剣の章 Sattivaggo

21 Received the last call from the death
死神が背中を叩いた―修行は死ぬ覚悟で行なうもの
剣経 Sattisuttaṃ

22 Communication and confrontation
似た者同士で触れ合う―触れ合いを人格向上につなげるべき
「触れる」経 Phusatisuttaṃ

23 Life is bonded
命は縺れている―自己観察者は縺れを解く
「縺れ」経 Jaṭāsuttaṃ

24 Mind should be guided but not controlled
問題から逃げると問題が襲ってくる―心が汚れるか否かを常に注意するべき
意防護経 Manonivāraṇasuttaṃ

25 Emotions distort communication
阿羅漢とは「私」が消えた存在です―煩悩は言葉まで汚染する
阿羅漢経 Arahantasuttaṃ

26 Ignorance and wisdom
闇と光―闇は無明、光は智慧
光明経 Pajjotasuttaṃ

27 Endless flux of suffering
苦しみの無限回転―執着は苦の原因
流経 Sarasuttaṃ

28 Forced to live
見つからない「生きる目的」―生命は煩悩によって生かされている
大財経 Mahaddhanasuttaṃ

29 Requiem to the body
宝物に見える汚物―肉体には愛着にあたいする価値はない
四輪経 Catucakkasuttaṃ

30 Story of the buddha’s images
仏像と人間ブッダの違い―苦を乗り越えるために依存を断つ
羚羊脛経 Eṇijaṅghasuttaṃ

■エピローグ
31 Right influence
善友のいることが幸福です―仏道は善友によって成り立ちます
サトゥッラパ群神の章「善友たちと共に」経 Sabbhisuttaṃ

前書きより

ブッダは人間と神々の師匠である(satthā devamanussānaṃ)と呼ばれます。その証拠として、お釈迦様のもとに神々が現れて、説法を聞いたり、あるいはお釈迦様に質問を出して答えをもらったり、という経典群が、相応部経典(Saṃyuttanikāya)の冒頭にある有偈篇(Sagāthāvagga)にまとめられているのです。中村元博士が『ブッダ 神々との対話』『ブッダ 悪魔との対話』(岩波文庫)という二冊に全訳されているので、ご存知の方もおられるでしょう。仏教学者の方々は文献学的に精密に翻訳されています。しかし、理解しやすく解説することは学術的な立場で行なう仕事ではないのです。そこで、この本では有偈篇のはじめに収録された「女神との対話(Devatāsaṃyutta)」の第一経から第三十一経まで、その内容を現代人の生きる指針として役立つように解釈することを試みました。

女神たちとブッダとの対話は、偈(詩)の交換という形でなされています。単体で読んでも意味が取りづらい箇所が多いので、どうしても伝統的なパーリ語の注釈書に頼って空白を埋めていく必要があります。しかし、注釈書でもいまひとつ解説しきれていない箇所も散見されるので、本書ではいささか大胆な新解釈を提示したところもあります。その可否については、識者の皆様の批判を仰ぎたいと思います。

ともあれ、この本を読む方々にとっては、お釈迦様と対話した女神たちのそれぞれの性格やキャラについて、興味を惹かれるのではないかと思います。経典に残された女神たちの問いに耳を傾けてみれば、神々と言えども、決して何でも知っているわけではないのだと理解できるでしょう。結局のところ、神々とは崇めたり恐れたりすべき存在ではないのです。私たち人間と同じく、いろんなテーマについて考えを巡らせて、悩んだり疑問を持ったりする知的な生命に過ぎないとわかります。とはいえ、人間と神々とでは存在次元が違うので、何に興味があるのか、という関心の持ちようも変わっているのです。本書で取り上げるのは女神との対話だけですが、われわれ人間と同じようにいろんなことを考えて悩んでいる仲間として、神々のことを理解していただければありがたいと思います。

~生きとし生けるものが幸せでありますように~