智慧の扉

2011年5月号

逆境を乗り越える「こころの明るさ」

アルボムッレ・スマナサーラ長老

いま日本は大変な時です。毎日、いろいろな暗いニュースを聞くと、こころが沈みがちになってしまいます。苦しんでいる人々を見ると、誰でも、居ても立ってもいられなくなるのです。なんとか助けてあげたい、人の役に立ちたい、という気持ちが湧いてくるのです。

でも、助けたい、助けたい、という気持ちだけが回転し続けると、それが煩悩になって、暗くなってしまう可能性があります。人の役に立ちたいと思って妄想ばっかりしていたら、「善いことをしたい」気持ちが悪い結果をもたらすことになってしまいます。

善意の空回りを防ぐためには、わずかなことでも、実際にやってみることです。「これならば私にもできます」ということを一つひとつ始めてみれば、明るいこころでいられます。

自分にできる範囲で何か善いことを実行する。それがこころの喜びになるのです。人の役の立つ行為をして、充実感をおぼえたとき、喜びが出てくる。自分は捨てたものじゃない、と思えるのです。たとえ自分が逆境に置かれても、「くじけないぞ」と思って立ち上がることで、また喜びが湧いてくるのです。こころが明るくなるのです。

皆さんは決してこころを暗くしないで、明るさを失わないで、被害を受けている方々に対しても、元気に勇気づけてあげてください。物質的にできることは限られています。それでも、なるべく人々を精神的に応援することをしてあげてください。

物理的にどんな苦しみや災害が襲ってきても、強い精神があれば、それを乗り越えられるのです。いま日本の皆さんは、明るいこころで、強い精神で生きるべき時だと思います。どうか頑張ってください。