智慧の扉

2012年12月号

幸不幸を分ける人生へのアプローチ

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 寝ることが好き。お喋りするのが好き。勇気がない。すぐ怠ける。いつも怒りの思考で物事を観てしまう。これらは人が堕落する道、破滅する道であるとブッダは説きます。仏教は心理学だから、脳・心の働きを精密に分析して言っていることです。

 世間では睡眠を重視しますが、寝るのは動物の仕事ですよ。人間なら、適切な時間だけ身体を休めて、あとは目覚めて過ごすこと。動物と違って人間の脳は毎日いろんなことを学んで、開発できるのです。睡眠を好むと、脳の成長を抑える神経回路ができあってしまいます。

 お喋り好きも危険です。いまは話す相手もいないから、インターネットで感情を吐き出して精神を破壊している。それで自分を成長させる大事な時間が無くなるのです。

 いくら立派なプランがあっても、「やるぞ!」と立ちあがる勇気がないと始まりません。ゴチャゴチャ議論するより、どれだけ行動したかが大切です。一歩を踏み出す勇気がない人は成長できません。

 生きることは大変です。大きな丸い石を山の頂上まで運ぶのは大変でも、転がり落ちるのは簡単。これが人生の法則です。「辛いのはいまだけ。後から楽になりますよ」というのは嘘で、成長すればするほど人生は難しくなるのです。そこで嫌になってしまう気持ちが「怠け」です。怠けたらすぐ転落しますから、踏ん張って怠けに克たないといけない。

 どんなに生きるのが大変でも、「なんだこれは!」と怒りで立ち向かってはダメです。「人生が大変なのは当たり前だ。昨日も大変だったように、今日も明日も大変だろう」と、いつでもクールに受け止めないといけない。このような微妙なアプローチの差が、人生の幸福と不幸を分けるのです。