智慧の扉

2019年7月号

心のネットワークと業の法則

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 いま・ここで生きている「自分」とは、生命のネットワークに繋がってエネルギーを供給されているひとつのユニットに過ぎません。ネットワークとは、異なるユニットの繋がりです。例えば皆様の持っているスマホはネットワークで繋がったひとつのユニットです。スマホはネットワークに繋がっているからこそ意味があります。ネットワークに繋がっていなければ、情報をやりとりできないので何の役にも立ちません。できることと言えば、アラームをセットするくらいのことでしょう。この現象は、生命の心の世界でも起きています。例えば家族が仲良くしているなら、家に帰ることが楽しいのです。ひとりで引き篭もるのは気持ち悪くて、家族といることで元気になる。皆様にも友達や仲間といることで楽しくなった経験があるはずです。それは心のネットワークが繋がっているということなのです。心のネットワークには、物理的な距離は関係ありません。
 
 心のネットワークのユニットたる「自分」は、単なる受信機ではありません。ネットワークに情報を送るデバイスでもあります。そこで、ユニット側から怒り・憎しみ・嫉妬・欲・わがままという自我の感情(エネルギー)を発信すると、ネットワークにウイルス(マルウェア)を仕込んだことと同じになります。あなたの自我の感情によってネットワーク全体が汚染されて、障害を起こして壊れるのです。個々の生命は、好き勝手に恐ろしい感情を発信して、いつでも心のネットワークを攻撃しているのです。心のネットワークは機能不全を起こして互いに安心・安全に生きることができなくなっています。結果としてネットワークの他のユニットから、自分に対して「不幸になれ」という信号が送られることになります。悪行為の結果は誰にも止められません。これは業の法則です。

 では、反対のことをしてみましょう。心のネットワークに自分から慈・悲・喜・捨のエネルギーを送信してみるのです。すると見る見るうちに心のネットワークが正しく機能して、自分も幸福を感じられるようになります。関係するネットワークのユニットが、自分に向けて幸福に生きられるエネルギーを限りなく送り返してくれるのです。結果として、安心して寿命をまっとうして生きることができるようになるのです。これも業の法則です。