智慧の扉

2008年2月号

ブッダの辞書に「しょうがない」はない

アルボムッレ・スマナサーラ長老

「しょうがない」という言葉は仏教にはありません。よく覚えておいてください。「しょうがない」と言いたがるのは人間の弱みです。私たちは苦しんでいる。心が汚れている。無知で愚かである。これを何とかするのだ、何があっても負けないのだ、とにかくこの無知の壁を破るのだ、と努力する道が仏教です。何でも「しょうがない」と投げてしまう暗い気持ちを断ち切って、智慧を開発して、苦しむことなく明るく生きることを教えるのです。

仏教は「いいわけ」が通じない世界です。しかし正直に頑張る人には、ビックリするほど親切な教えだと解るはずです。先生の本当の優しさを知るのは、勉強する生徒だけです。授業をサボって遊んでいる人は「あの先生は鬼だ」という。でもどんな怖い先生も、ちゃんと勉強する子には怒鳴りません。質問に来たら、自分の仕事を止めてでも答えてあげる。仏教も同じです。お釈迦さまは自分を神様とは言っていません。「偉大なる師である」と言うのです。師とは厳しいものです。しかし、間違いながらでも頑張る人にとって、お釈迦さまは父母よりも優しく、親切な存在になるのです。