智慧の扉

2008年11月号

「役に立つ」ことが仕事です。

アルボムッレ・スマナサーラ長老

現代社会は企業の経済活動を中心に回っています。企業において、従業員をまとめる管理職の役割はとても重要です。

お釈迦さまは、管理職に必要な性格として、四項目を挙げました。部下が必要とするものを与える(布施)、言葉のプレゼンテーション能力を高める(愛語)、部下の能力と人格の向上のために有意義な手助けをする(利行)、上司・部下という立場の違いはあっても人間として対等・平等だという意識を徹底する(同事)、という四つ(四摂事)です。驚くほど現代的な項目でしょう。管理者がこの四つを実践すれば、ストレスとは無縁な、活気に満ちた職場が現れます。

四摂事は組織の中だけで実践するものではありません。特に「必要を与える(布施)」は人間社会の一員たる企業の役割といえます。企業は利益を上げるべきだとしても、「儲け」を仕事の目的にしてはならないのです。儲けはあくまで副産物であって、「人の役に立つからこそ仕事なのだ」と、定義を変えてください。あなたの仕事で「喜び」を感じた人々から頂く「ご褒美」が自分の収入であり、企業の利益だと理解することです。

宣伝の洪水で欲望を刺激して、必要ないものを売りつけるのは「盗み」です。盗人が幸せになれる、という法はありません。強引に人から奪ったものはすぐになくなる、という業の法則があります。人々の役に立つ、必要を満たす仕事によって、「充実感」という最高の財産が得られるのです。