智慧の扉

2009年3月号

「ブッダのこころ」を生きる

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 すべての生命には平等に、誰にでも生きる権利があります。ゴキブリにも、魚にも、人間にも、生きる権利があるのです。すべての生命が、この世の中でお互いに邪魔せずに、できれば協力して生きられるなら、どんなに気分がいいでしょうか。それを実現するのが、無量の慈しみという「ブッダのこころ」です。

 経典に譬えがあります。この大地に対して、私たちは鍬で耕したり、重機で資源を採掘したり、ゴミで埋め立てたり、やりたい放題です。それでも大地は平然といます。その大地のように、すべての生命に変わらない無量の気持ちを持つこと。あの人は好きだ、あいつは嫌いだといった偏見を捨てること。それが「ブッダのこころ」です。

 また譬えがあります。この大空には、どんな画家がどんな絵の具を使ったとしても、何も描けません、その大空のように、他の生命に何を言われようが、何をされようが、決して変わらない落ち着いている。それが「ブッダのこころ」です。

 さらに譬えがあります。大海には、地上からいろんなゴミが流れ込みます。何が入ってきても、波に乗せて岸に打ち上げて、海は美しいままいるのです。その大海のように、他の生命との関係で嫌なことがあっても、腹が立つことがあっても、さっさとその気持ちを捨てられる。それが「ブッダのこころ」です。人類が学ぶべき、育てるべきこころです。こころのスケールを無量に大きくしなければ、こころの平安は得られないのです。