智慧の扉

2012年5月号

和合を保つ三つの方法

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 家庭であれ、職場であれ、自分のいる場を天国にするか地獄にするかは自分のアプローチ次第です。仏教の出家サンガには、共同生活する人々が和合を保つための三つの方法が伝えられています。

 一、仲間に対して、一人でいる時も一緒にいる時も、いつでも慈しみで身口意の行為をおこなうこと。「やさしさ」は家の中から始まらなくてはいけない。そこからどんどん範囲を拡げていくのです。外では世界平和を唱えて、家で奥さんと喧嘩するのでは話になりません。

 二、問題を見つけた人が、それを解決すること。例えばトイレの水が減っていると気づいたら自分で汲んで足しておく。もし重かったら仲間に助けを頼んでもいいのです。精舎の境内が汚れていると気づいたら自分で掃除する。秘訣は、「担当は決めない」ことです。たとえば家庭でも、「食事はお母さんが作るもの」という風に家事の担当を決めてしまうと、そこから喧嘩が起こるのです。出家サンガでは年齢や立場にかかわりなく、最初に気づいた人が率先して仕事をするのです。「長老だからこれはやりません」ということもありません。

 三、「自分の考え」を捨てて、いつでも相手の気持ち・思考・好き嫌いに入れ替えて考えてみること。それで、自我を張ることが成り立たなくなります。もしその集団に問題行動する人がいても、当人の心の中から問題を見てみないと解決方法が出てこないのです。深刻な家庭不和や職場のトラブルも、調べてみると発端は些細なことだったりするのです。

 この三つが、集団の和合を保つブッダの教えです。皆さんが自分たちの暮らす環境を平和にするためのヒントになると思います。