智慧の扉

2012年11月号

人生とはレンタルである

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 私たちは、何も持たずに生まれてきました。母胎に宿る時の最初の細胞さえ、父・母からの借りものです。それ以来、人生はすべて他所からの借り物・レンタルで賄っています。「私のもの」は一つも成り立たないのです。

 レンタルするときの規則は、レンタル料金を払うこと。それから、丁寧に使って返すこと。みなさん朝から晩まで働いているのは、レンタル料金を払うためです。結婚しても、毎日必死に家族サービスしないといけない。あれもレンタル料金を払ってるのです。面倒くさがって、払い忘れたらたいへんです。決してわがままは言えません。

 私たちがどう生きるべきか、という問いへの答えは、「人生はすべてレンタル」と理解すれば簡単に見つかるのです。体を壊す食べ過ぎは、レンタル法則違反です。アル中になったり、乱暴な生き方をしたりするのも違反です。事故を起こしたら、レンタル料金の外に余計に弁償しないといけないのです。

 かっこいい人は、ルールを守って、丁寧に体を使って基本料金で返すのです。

 人生はレンタルであると理解すれば、貪瞋痴で生きることの矛盾が消えます。「ルールを破る人はその人が余計に料金を払うだけです。私は巻き込まれませんよ」と冷静にいられるのです。

 このレンタル理論をしっかり憶えておくと、無知が破られます。理性が現れます。生きるうえで、欲も怒りも必要なくなるのです。理性に基づいて考えると、必要なものを揃えるために実行すべきことが明確に見えてきます。欲と怒りで考えると実現不能のアイデアしか出てこないのです。

 人生レンタル理論を踏まえて、どうぞ思う存分生きてください。人生は借り物ですが、思う存分使うために借りたのですから。