智慧の扉

2014年8月号

才能を発揮する秘訣とは?

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 才能というのは、短時間で大量の仕事を正しくこなすことです。それには、ある特別な能力が必要です。特別な能力と言っても、特別な人にしか実現できないものではありません。もしあなたが、ブッダの説いた「無常」という真理を知っているなら、もう才能あふれる人になっているはずです。
 
 ブッダが説いた「無常」とは、「同じことは二度と現れない」という意味です。例えば、昨日の仕事が楽に出来たからといって、今日の仕事も同じように出来るということは成り立たないのです。そこを憶えておけば、今日する仕事は「これは初めて挑む仕事だ、さてどうしようか」と脳がはたらきはじめ、いい緊張感が生まれて、それで「では、こうしよう」とやるべき仕事が見えてくるのです。

 その時、この仕事は「あぁ、これなら経験がある」と思ってしまうとアウトです。ですから、「同じことは二度と現れない」というモットーで生きてみれば、脳細胞はビシビシとはたらき始めるのです。

「才能」というのは、我々が思っているような大それたことではありません。才能は、あった方がいいのです。才能開発などは、いくらか役立つかもしれませんが、才能を開花させるためには、「無常」ということを徹底的に理解して、心で納得しておくことです。

 たとえば、毎日同じ家や家族、同じ仕事や自分があると思わないことです。
物事はことごとく無常だ、ということを観察すると、智慧が現れてきて、才能が発揮されて、問題なく生きていられます。それからもうひとつ。いつでも明るくて、楽しくいなくてはいけないのです。でなければ、才能は開花できません。

 苦しくて、悔しくて、競争心で、怒りで、ライバル意識を燃やして、興奮してアドレナリンを出しているようではダメです。それは身体に毒で、ダメージを与えます。そうではなく、物事・問題・自分自身について「笑える」状態が必要です。でも、他人のことを笑うのは侮辱です。やめてください。

それぞれが、出来る範囲で自分の才能を発揮してみてください。