心の産廃を処分する方法

　認識は眼耳鼻舌身という五根から始まるのですが、それらを「意」でまとめる時にトラブルを起こします。意が眼耳鼻舌身それぞれから入る情報をひとまとまりの「実体」として捏造するのです。捏造された認識は、貪瞋痴という煩悩を掻き立て、自我の錯覚を惹き起こします。誰も自覚していないのですが、私たちは意の働きによって散々な目に遭っているのです。
　
　私たちは「意」を用いて絶えず思考・妄想しています。思考・妄想というのは、先ほど述べた認識過程で起こる捏造の結果です。つまり思考・妄想とは、意がつくる「産業廃棄物」なのです。それが人生のトラブルの原因になるのです。では、私たちはこの産業廃棄物にどう対処すべきでしょうか？　思考・妄想という産業廃棄物は、放射性廃棄物よりも格段に危険な代物です。長期間に渡って危険性が残る放射性廃棄物であっても、来世まで追いかけてきて影響を及ぼすことはありません。しかし思考・妄想の結果は、生命が輪廻転生する限り追いかけてくるのです。
　
　お釈迦様は、心の産業廃棄物の処分の仕方について教えています。それは「sati(サティ)・気づき」です。たったそれだけで助かるのです。Satiを実践することで、恐ろしい精神的な産業廃棄物を安全に、完全に処分することができます。Satiとは、誰にも実行できない複雑なことではありません。ただ、今・ここで起きていることに集中して気づくだけです。年齢や性別などに関わらず、皆に実践できます。Sati の実践により、思考・妄想を止めるだけではなく、捏造という認識の欠陥機能を消去することができるのです。
　
　Satiの実践は、心の汚れがなくなるまで行ないます。汚れがなくなり次第、智慧が顕れますので心は汚染されなくなります。そこまで、satiを実践するのです。　生命が解脱に達すれば、satiの実践は終わりです。しかし、解脱に達しても、すぐ死ぬわけではありません。解脱していても肉体がある限り、この世での生活があります。たとえ煩悩がない聖者であっても、肉体を維持するためには多少の苦労が伴います。肉体を捨てて般涅槃に入ることで、輪廻からの完全解放という、最終ゴールに達するのです。