2023年4月号(202)
脱・引き寄せの法則
私たちの心は、どんなものも引き寄せようとするエネルギーで成り立っています。引き寄せるエネルギーとは、実際には取る・掴むという働きです。取る・掴むという働きは、内向きに作用する力です。これが生命共通のシステム・機能なのです。引き寄せるエネルギーによって、新たなエネルギーを得たとしても、内向きの方向性や、取る・掴むという働きが停止することはありません。
この心のシステム、意識の本質、認識の働きは、皆が知っている宇宙のブラック・ホールと同じです。一人ひとりの心が、どんなものも見境なく無限に飲み込んでしまうブラック・ホールのような状態なのです。私たちはブラック・ホールのような心で、あらゆるものを引き寄せ、飲み込み、破壊しながら生きているのです。
心の寿命は瞬間です。瞬間で生滅し、直前の心と似た心がまた生滅し流れていきます。取ることしか考えない引き寄せるエネルギーでは進化できません。残念ながらブラック・ホールという本質の心は、常に退化しているという状態なのです。生命は常に危険な状態です。いくら引き寄せても、「足りる(満足)」ということはありません。引き寄せるエネルギー(執着)だけは消えません。磁石は鉄を引き寄せます。一度引き寄せたからといって、それで磁力が消えて無くなることはないのです。
ブラック・ホール状態で取り続けることが、いかに苦しみに満ちた生き方なのか。生きることは闘い・競争・奪い合いとなり、苦そのものです。やっと得たものさえ簡単に奪われてしまう。それほど苦しいのに、しかし足りないのです。
ブッダは解脱への最初の実践として、「dāna【ダーナ】 布施」を説かれました。布施というのは、ブラック・ホール状態の内向きの心を、外向きに変える革命的な教えなのです。布施とは、引き寄せるエネルギーを、解き放つエネルギーに変える。取る・掴むという働きを、捨てる・手放すという真逆の働きにする。自分の心を進化させる智慧なのです。心を進化・解放させることで、充実感・満足・安らぎを得ることができます。
布施(無執着)によって、生きるという苦の自動回転システムにブレーキをかけ、逆回転させる効果があるのです。貪・瞋・痴の感情を不貪・不瞋・不痴に転換させるために、心を進化させるために、布施の実践が必要であるとブッダは教えたのです。



