あなたとの対話(Q&A)

子供は産まない方がいいか

輪廻から考えると、子供を産むことは四苦八苦の世界に命を産むことになります。これは罪悪ともいえるのではないのでしょうか? また、すべての人が子供を産まなければ、四苦八苦の世界は消滅するとも考えられます。この点について仏教では、どのように考えているのでしょうか?

この理屈で言えば、ご飯も食べられなくなります。なぜならばご飯を食べて寿命が延び、四苦八苦は続くからです。そこで断食して死んだ愚か者は、その無知のせいで解脱を得るのではなく、さらに苦しいところに生まれ変わるのです。すべての人が子供をつくらなければ皆解脱できるという論理は、残念ながら仏典では見あたりません。そのような思考は正真正銘の邪見だと言っています。邪見を持っている人は、その邪見を捨てない限りは、必ず悪趣に生まれ変わると釈尊は説かれています。

あり得ない話ですが、すべての人間が子供をつくらなければ、この地球上から人間が滅びるだけです。簡単に考えると人間に全滅しようと言っていることになります。同じ理屈で、他の生命も生き延びると四苦八苦が延びるので、皆全滅すればよいということになります。結局は、親切な顔をして一切の生命の破壊、全滅を願っているだけのことになります。ですから、この思考は明らかに、とても危険な邪見です。

そんなつもりでおっしゃったことでないのはわかってはいますが、「顔が可愛いからといって虎の口に手を入れる」ものではありません。我々の頭には、時々、一見何の害もないような妄想が生まれますが、気をつけないと、大変危険で非道徳的かつ残酷な邪見に陥る可能性がありますので、思考についてもちゃんと気をつけてください。

何か思考が生まれたら、この思考は自分の幸福になるか、この思考に関係ある人々の幸福になるか、すべての生命の幸福につながるものかと、チェックしてみてください。その3つの条件を満たす思考のみが正しい考え方です。「正思惟」です。

「皆で仲良くしましょう、戦うなかれ、平和を守りましょう」というのが正しいのは当たり前のこと。どんな宗教を信じる人にも反対できないこと。誰にでも簡単に単純に実行できることを言っているのに、誰も守ってくれないこの世界で、性行為をするなかれと言うこと程、無意味でバカバカしいことがあるでしょうか。ですから、このような質問については、仏教では何も言わないのです。

子供をつくること、家を造ること、仕事をして食べていくこと、最低限で言えば、呼吸すること等々、一切の行為は、命を延ばす行為です。したがって、苦しみを延ばす行為です。子供をつくることだけが悪いわけではないのです。このような行為を止めればその人は死ぬだけであって、心は成長するわけでも、解脱を得るわけでもないのです。ですから、『罪を犯さないこと』にだけは気をつけて、生きる行為をふつうに行って、楽に生き続け、その生きている時間に修行をして解脱することが、お釈迦さまの説かれた仏教です。

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