能力ある人より役に立つ人
世の中で必要とされるのは能力のある人ではなく役に立つ人なのです、とお聞きしたのですが。これをもう少し詳しく説明していただけないでしょうか。
- ある人が役に立っている。しかし、その人には全く能力がありません。→これは矛盾です。成り立ちません。
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ある人が役に立っている。なぜなら、その人には役に立つための能力がある。これは成り立ちます。
しかし、 - ある人に能力がある。ゆえに、その人が役に立つ。この項目は成り立ちません。
なぜなら、
a. 能力が完全に役に立つ場合もある。
b. 能力の一部が役に立つ場合もある。
c. 能力が全く役に立たない場合もある。
d. その能力は、逆に、役に立つためではなく、迷惑になるように、邪魔になるように、不幸をもたらすように、使用される場合もある。
あなたは、以下の例の、どれに賛同することができますか。
a. 一郎さんはネジひとつさえ、ろくに締めることはできませんが、素晴らしい溶接技術があります。
見事に溶接だけはしてくれるので、溶接工場でたいへん役にたっています。
b. 次郎さんは優秀な工学士です。その上、経理士の免許ももっています。
しかし、彼は工場の道具のかたづけを仕事にしています。工場にはたいへん役に立っているのです。
c. 三郎さんは工学エンジニアで、博士号ももっていますが、彼は自分の庭で野菜を作って、それを食べて生きているのです。
誰とも何の関わりももっていません。
d. 四郎さんは工学博士だけではなく、新しい技術を開発する能力も抜群にもっています。
かれは、テロリストたちにセキュリティを破って爆弾を仕掛ける技術を提供しています。
これらの例から、おわかりいただけたのではないでしょうか。
倫理的に誰に賛同するべきか、誰を評価するべきか、誰の生き方が正しくて誰の生き方が間違っているか‥‥判断する人は、「役に立つ」という条件を基準にすると思います。その場合は「能力がある」という条件は基準になりません。この状態を省略して簡単な言葉で表現するなら、「世の中で必要とされるのは能力のある人ではなく役に立つ人なのです」になります。しかし、「世の中は人の能力を問わない」という意味の推測を引き起こすかもしれませんね。もう少し正確に言うなら、「世の中で必要とされるのは能力があるだけの人ではなく役に立つ人なのです」ということです。