ブッダが幸せを説く
人の道は祈ることより知ることにある
アルボムッレ・スマナサーラ長老
幸福に生きるための選択
仏教ではいちばん大切なこと、生きるということを探求してみようといっているのです。「仏教とはなにか?」という答えは、ここにあります。それを探求し、わかったところで、私たちはものごとを選ぶことができるようになります。
皆さんは日常いろいろと悩んでいることでしょう。結婚するときは、あの人でいいのかな、他の人のほうがいいのではないか、この人に自分の一生を賭けてしまって大丈夫かなあ、とか。また、買い物にでかけて何時間も選べなくて、悩んだり、レストランに行ってもあれもおいしそう、こっちも美味しそう、となかなかメニューを選択できなかったり、そんなことが私たちの周りにはいつも付きまとっています。どうして素早く、的確に選択できないのでしょうか。
子どもは中学を卒業する頃から、みんないろいろ大きな問題を抱えますね。高校をどうしよう、進学か就職か、就職したとすればどんな仕事を選ぶか等々。最近あるお母さんが、自分の息子が大変落ち込んでいると相談に来られたのですが、息子さんが言うには、スポーツをやりたいのだけれど、スポーツをやるには高校へ入らなくてはならない、でも勉強はしたくない、それを決断する時間はあと一ヶ月しかなく、早くどうするか決めなければならないというのです。
人生という道には死ぬまで限りない交差点があるのです。その時その時、どの道に進むべきかという選択肢を前にして、悩みます。でも何故そんなふうに悩むのでしょう。
それは生きることが大事であって、他のすべては生きることを支える道具にすぎないということを忘れているからなのです。教育であろうが、結婚であろうが、家族であろうが、子どもであろうが、おしゃれであろうが、ぜんぶ道具であるということを忘れているのです。
人生があって、生きるということがあって、その生きるということを素晴らしくするためにはこれが必要だとわかれば、悩むことなくすぐ選べるのですね。
大雨が降っているときに、外出しなければならないとなったら、その時傘をさして行くか、傘をたたんだまま持っていくかで悩む人がいるでしょうか。必要なことが明確になれば迷いはなく、悩みもないのです。自分の人生を明確にするためにも、道具集めから一度離れて、冷静に、客観的に観察する習慣を持つことをお勧めします。
この施本のデータ
- ブッダが幸せを説く
- 人の道は祈ることより知ることにある
- 著者:アルボムッレ・スマナサーラ長老
- 初版発行日:2001年5月13日