智慧の扉

2012年10月号

仲間づくりに気をつけよう

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 祇園精舎での対話の続きです(先月号)。最初の答えに感動した女神は、さらに「世尊よ、二つめの堕落の道を教えてください」と頼みました。ブッダは「悪人を好み、善人を嫌う。悪人の生き方に憧れる。これが堕落の道です」と答えました。
 
 人間の生きる道は仲間で決まります。人間は面白い生き物で、周りを真似ることで、環境にあわせて自分を作っていくのです。これは他の動物にはあまりない特徴です。生まれた時から微妙な性格はあっても、どうにでも変わります。ですから、「あなたは誰とつきあってるのか?」ということに気をつけましょう。

 子供のために大人がすべきなのは、仲間づくりの環境を整えることです。いろんな人と付き合ったほうがいいとか、経験になるとかいう態度は的はずれです。乱暴で悪いことばかりする、嘘を撒き散らす仲間とつきあったら、その子の人生は台無しです。引っ張ってでも離さないと、その悪い性格が心に入ります。
 
 たとえ大人になっても、私たちは周りから影響を受けます。生まれつき頭がいいか悪いかはたいした問題ではなく、ひと付き合いこそ人間成長の第一条件です。人生の質は、自分の周りの人間環境で決まってしまうのです。
 
 それから、自分が相手のことをカッコイイと思っていると、簡単に影響されてしまいます。ですから、憧れという感情にも気をつけないといけない。どんなに良くない環境にいても、憧れていない場合は影響を受けません。不幸になる人は悪人に憧れ、悪人の性格に洗脳されてしまうのです。幸福になる人は、善人に憧れるのです。
 
 幸福な人生のためには、つきあうひとに気をつけること、人格者に憧れを抱くこと、というポイントがとても大事なのです。