智慧の扉

2012年9月号

ダンマを好む人になろう

アルボムッレ・スマナサーラ長老

 ある夜、祇園精舎におられた釈尊のもとに、光り輝く女神(天女)が舞い降りて、質問しました。「私たちはお釈迦さまに、生命が堕落する道をお尋ねします。どうぞ教えて下さい。」釈尊は答えます。「成功するひとを見分けるのは簡単です。堕落するひとを見分けるのも簡単です。ダンマ(法)を好む人は成功し、ダンマを嫌うひとは堕落します。」

 ダンマには仏法という他に、真理、正義、道徳、法則など広い意味があります。釈尊はダンマを好む人、すなわち真理に沿って生きるひと、正義を求めるひとは成功すると教えました。反対にダンマを嫌うひと、悪事や不正を好む人が堕落すると教えたのです。このたった一行で、「堕落する道」についてすべて教えたことになります。

 成功したければ、幸せになりたければ、ダンマを好んで生きることです。例えば「嘘をついてはならない」というのは生命のダンマなのです。嘘つきが好きな人はいませんね。動物でも、騙したら怒ります。騙す人は生命に嫌われるのです。それでは生きていけません。生き物を殺さない、盗まない、よこしまな行為をしない、という戒めも生命普遍のダンマです。

 ダンマを仏法(ブッダの教え)という狭い意味に捉えても、結果は同じです。仏法を好む人は、安穏に生活します。世の中の流れに左右されず、流行に踊らされず、迷信に怯えず、理性をもって堂々と生きられるのです。ブッダの教えが身体に入ると、やっと笑顔が戻ってきます。心が活発になって、幸福になるのです。反対に「ブッダの教えは嫌だ」と言ったら、そのひとは世の中にあるインチキな教え、不完全な教えを信じるはめになります。それで心が堕落して、不幸になってしまうのです。