2015年8月号
“失敗”は自分の師匠
人生で一番ありがたいものは、失敗です。世間では、失敗は絶対に嫌だと思っています。人間がいくら踏ん張ってみても、失敗せずに生きることはできません。しかし、私たちの気持ちはその事実を瞬間たりとも認めたがりません。いつでも「私は失敗しません」と思っているのです。
ですから、ステップ1:無理にでも「私も他人も失敗する」ということを心に入れてください。「失敗は当たり前」「私も他人も失敗する」ということを真理として受け取ることができれば、素晴らしく謙虚で優しい人間になります。
次に、ステップ2:私たちはどのように生きるべきなのか、というと、「失敗しないように生きる」ことに取り組まなければいけないのです。決して失敗してはいけません。
しかし誰だって失敗するから、ステップ2の「失敗してはいけません」ということは成り立ちません。ここで、明確に矛盾が見えてくるはずです。この矛盾がとても大事です。どのように、この矛盾を克服するべきでしょうか? そこで、ステップ3があります。
ステップ3:「失敗から学ぶ」のです。失敗は、人格を改良するためにわれわれの未熟なところを教えてくれる師匠なのです。失敗するケースは無数に出てきます。失敗しないように、上手くやろう、間違いなくやろうという気持ちで頑張りつつも、実際に起きてしまう失敗をひとつひとつ観察して、「なぜ失敗したのか?」というポイントを見つけて直すのです。
失敗がなければ、自分を向上させるためのデータが入ってきません。失敗しても学ぶことが仏道なのです。そうしないと成長はありません。私たちの師匠と言えば当然お釈迦さまですが、しかし私たちが犯す失敗も師匠なのです。失敗は人格を向上させるチャンス、心を変えて成長させるチャンスであって、これは解脱に達するまで必要なことです。失敗に落ち込むのは残念な現象ですが、失敗は成長に不可欠なのです。失敗から学び続けることで、私たちは人格の完成まで進めるのです。