施本文庫

なんのために冥想するのか?

 

アルボムッレ・スマナサーラ長老

意図的な進化

・進化するまで待たずに、意図的に変化させることもできます。
・成功すれば都合の良い結果になるのです。

進化は自然法則ですが、進化が起こるまでじっと待つか、意図的に進化させるか、という選択ができます。意図的に進化させようと思うのは、どうせ自分の都合でしょう。自分に都合の良い状況を作りたいでしょう。それは、別に悪いことではないのです。

たとえば、体力がなくて病弱の子供が、青年になってくると「これはまずい」と思って、意図的に行動する。しっかりした指導の下で、コーチの下でスポーツする。しっかりした食事コントロールをする。毎日頑張る。結果として、きわめて健康で筋肉もりもりの人間になります。
日本でもいくつか現実的なケースがありました。テレビで見たものですけど、若いときの写真を見たら、ものすごく貧弱な身体で病弱だったのに、今見るとすごいキン肉マンで、筋肉モリモリ。とても美しくてかっこいい身体なのです。それは意図的な進化を起こした結果です。というわけで、計画を立て意図的な進化を引き起こすのは、なかなか良いことなのです。

・物質の意図的な変化には「科学的発展」といいます。

私たちは、物質を変化させること、環境を変えることに「科学的発展」と言っています。自然界にあるさまざまな物質を組み合わせて人間に必要なものを作り出し、物質エネルギーの法則を発見してさまざまな機械を開発するのです。
身体がウィルスの攻撃を受けたら、病気になります。そこで、医学研究者はウィルスに対応するワクチンを開発するのです。それらはすべて意図的な進化・変化です。人間の都合によって意図的に変化させるので、悪いものではありません。科学発展によって、人間は楽に生きているのです。

・こころを意図的に発展させることが「冥想」です。

このように、身体を発展させることも科学的なのです。「では、こころをどうやって意図的に進化させるのか?」というところで、冥想と呼ばれる実践方法を使うのです。ですから冥想という方法も、必ず科学的なものでなければいけません。

・自然進化には四十億年かかったが、意図的に起こす変化の結果はすぐ現れるのです。

自然変化は、待たない方が無難です。何万年かかるかわからないのです。私がとても気になっているポイントは、人間の大脳はものすごく進化しているが、まだ大脳に適応した生きかたができていないことです。いまだに原始脳に支配されて生きているのです。それでは、動物と同じです。
そのうち変わるだろうと思いますけど、それを待っていたら三十万年ぐらいかかるでしょう。三十万年も経つと、この地球があるかないかもわかりません。だって、人間は脳の動物的な機能を使って環境を変えているのですから。それでも、自然進化が起こるまで、万年単位で待つべきでしょうか?待ったとしても、皆さんにとってなんの関係もない話です。二十万年、三十万年後の話ですから。

というわけで、答えは明確です。「自然進化を待たず、意図的な進化をしよう」ということなのです。待ってはいられません。身体が弱い人々が意図的に頑張って強い身体に進化させるように、こころが弱い人々も意図的に頑張って強い精神を作らなくてはいけないのです。
誰のこころも、本来、弱いもののです。こころは、条件がどうであっても退化しようとする性質を持っています。菩薩のエピソードを例に出して、稀なケースもあるのだと前に説明しました。計画を立てて、早くこころを進化させましょう。この場合は、「進化とは変化」という意味にはならないのです。意図的に行なう進化なので、「成長・向上」という言葉を使うべきです。

・冥想とは、こころを都合良く意図的に進化させることです。

もう一度言います。冥想とは、そういう実践なのです。現代的にイメージされている、ちょっとしたアクセサリーではないのです。冥想について説明するための前提の話は終わりました。もう、これで十分でしょう。

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この施本のデータ

なんのために冥想するのか?
 
著者:アルボムッレ・スマナサーラ長老
初版発行日:2016年4月29日