わたしたち不満族
満たされないのはなぜ?
アルボムッレ・スマナサーラ長老
3 「満足」対「不満」
◇不満組
「不満組」の性格は、暗くて、不満ばかり言っています。
道を外すと何をするかわかりません。自己破壊をするか犯罪をおかしたりすることもあるでしょう。
◇満足組
「満足組」は、元気で明るい性格ですが、調子に乗り過ぎると傲慢な面もみられます。また、日常生活の中で自分の決まった生活パターンが崩れると、対応できなくなり、混乱するところもあります。
冒頭でもお話しましたが、日本人はなぜ満足しているのかといいますと、あまりにも忙しいからなのです。
決まっている生活パターンがあり、朝から晩までやるべきことがぎっしり決まっているため、余計なことを考える暇もなく、希望や夢を抱く余裕もなく、だから満足して落ち着いているのです。
しかし、いつもの生活パターンが崩れると、途端に対応できなくなります。
日本社会では「今までうまくいっていたのに、ちょっとしたことで全部崩れてしまった」ということが、テレビや雑誌などでよく報じられているでしょう。
満足組の危ないところはここです。
スムーズに流れていれば問題ないのですが、いつもと違うことが起きると、対応できずに失敗したり落ち込んだりしてしまうのです。
◇世間の流れに適応できない不満組
不満組は、世間の流れに適応できません。
友だちと仲良くしたり、近所づきあいをしたり、会社の上司や同僚とうまくつきあうことができません。社会に適応することが難しいのです。
◇世間の流れに身を任せている満足組
満足組は、世間の流れに身を任せて生きています。それで安心感を得ているのです。
わかりやすく言いますと「みんなと同じことをやっていれば、それでいい」と考えているのです。
学校に行き、就職して、結婚し、子供を育て、普通の流れに合わせていればそれで十分ですと。
満足組の特色は、自分でものごとを判断するのではなく、他の大勢の人びとがやることに合わせて生きているということです。
◇問題が起きたとき、解決できない
みなさんの中には不満組に入る方はほとんどいらっしゃらないと思いますので、満足組のことに気をつけてください。
満足組は毎日の生活パターンが崩れたり、新しい問題に出会ったりしたとき、どうすればいいのか判断できず、混乱します。
たとえば毎日三時に買い物に行くことに決めている家庭の奥さんは、何か事が起こって三時に行けなくなると、それだけで「どうしよう」と困ってしまうのです。
しかし、いつもいつも決められたとおりにものごとが運ぶわけはないでしょう。でも満足組の人たちは、想定外のことが起こると、対処できず、途方に暮れてしまうのです。
それで「マニュアル」が必要になるのです。良いか悪いかはわかりませんが、日本にはたくさんのマニュアルがあります。
子育てのマニュアルから介護のマニュアル、仕事のマニュアル、結婚のマニュアル、遊びのマニュアルまでいろいろあります。
ですが、マニュアルにないことが起こったらどうするのでしょうか。
そういう予想外のことが起こったとき、「智慧」が必要になるのです。瞬時に判断し的確に解決できる人は、決して失敗しません。
しかし、満足組はなかなか解決できないのです。
◇どちらも理性的ではなく感情的
世間に合わせて生きるというのは、無知な人にとっては一番安全で楽な生き方でしょう。でもこれは理性的な生き方ではありません。
他方、世間に合わせることができずに対立やケンカばかりしている不満組も、理性がありません。ですから、どちらとも理性に欠けています。
満足組も不満組も感情に負けているのです。
◇両方とも依存症
また、どちらも必要以上に世の中に依存しています。
満足組はまわりに合わせることを基準にして生きていますから、当然依存していますし、不満組は「世の中が悪い、社会が悪い、親が悪い」などと攻撃や反発をして生きていますから、これも結局、まわりに依存していることになるのです。
したがって、どちらとも「依存症」なのです。
ここまで「日本社会における不満と満足」について話してきました。これから、仏教の話に入りたいと思います。
この施本のデータ
- わたしたち不満族
- 満たされないのはなぜ?
- 著者:アルボムッレ・スマナサーラ長老
- 初版発行日:2006年9月23日