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一生役立つブッダの育児マニュアル

親の「どうしたら?」と子供の「どうして?」に答えを出します 

アルボムッレ・スマナサーラ長老

子供は論理的な生き物である

それは、自分の家庭の環境から教えてあげてください。簡単な例で言えば、たとえば子供が怒ったとき「お母さんがカンカンに怒るのは好きですか?」とか「怒られるのが好きですか? かわいがってもらうのが好きですか?」と聞くのです。答えは決まっていて、誰でも怒られるのは嫌いなのです。
「あなたが怒ると、お母さんも嫌ですよ」とか、あるいはちょっとオーバーに「あ、もうすごく嫌ですね」と言えば、怒ってはいけないということがなんとなくわかるでしょう。なんでもそうやって例を出して言うのです。

大人より子供の方がずっと論理的です。大人から見ると「子供だから」という気持ちになりがちですが、実際はすごく論理的なのです。子供はよく変な絵を描くでしょう。大人は「どうせ子供の絵だから」と言いますが、そこには理屈があるのです。
たとえば人間の頭の上に花がある絵を書いたとします。頭の上に花が咲くはずはないから、どう見ても変な絵です。そこで「子供だからそんな変な絵を描くのだ」で終わらせるのではなく、子供に聞いてみてください。「なぜここに花があるの?」と。
もしかするとその子は「この人は花畑で寝ていたんだ。だから頭に花がついているんだよ」と言うかもしれません。その場合その子は、花畑で寝ていた人が気持ちよく起きたところを描いているのです。表現力がないから、大人にはわからないだけのこと。聞いてみれば、ちゃんと論理的なのです。

ある子が、ちょっとした街の絵を描いて、人も描いて、それからその上を全部線で消してしまったことがあります。消してから、偉そうに私のところに持ってくるのです。「絵を描きました」と。
大人から見れば、描いた絵を茶色のクレヨンで消してあれば、もしかするとこの子は病気では、と思うかもしれません。でも私は何の感情もなしに「君はこの絵を全部消してしまったの?」と素直に聞いてみました。するとその子は「これは雨の音だよ」と言ったのです。つまり、子供は雨の中の街の絵を描いていたのです。子供にとって雨の音は結構気になるものです。すごい音ですからね。だから音も描きたいのです。それで音を強引に描こうとした結果、絵が全部消えてしまった。
子供というのは、ふざけて遊んでいるようで、ちゃんと論理的にものごとを考えています。だから私たちも、子供にしつけをするときは丁寧にした方がいいのです。子供は論理的です。すごくゆるやかな、やさしい論理を持っているのです。

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一生役立つブッダの育児マニュアル
親の「どうしたら?」と子供の「どうして?」に答えを出します 
著者:アルボムッレ・スマナサーラ長老
初版発行日:2004年8月