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こころのセキュリティ

爆発寸前のあなたを幸せに導く「日夜の指針」 

アルボムッレ・スマナサーラ長老

妄想世界からの脱出作戦

では、こころというものは、どのようにして育てたらいいのかという話になります。

まず必要なことは、「妄想」という世界を知っておくことです。私たちのこころには、子供の頃から夢の世界を楽しみたいというデータがインプットされています。これは、どんな人間にも多かれ少なかれ例外なく組み込まれていますし、大人になっても想像の世界を楽しむという傾向はつづきます。ここで重要なのは、妄想や想像と現実はまったく違うということを知っておくことです。

小説やマンガに描かれる、そして映画や舞台などで演じられる世界は物語であり、われわれの欲、怒り、希望、悩み、悲しみなどの感情を刺激するために用意されたつくりものだということです。そういう感情に訴えてこないかぎり、作品にはならないのです。読んだり見たりしているうちに感情移入して引き込まれ、いつの間にか現実と妄想の世界の区別がつかなくなることがあります。つくる側の人びとも、なんとかリアルに、それが妄想ではなく現実に思えるようにつくることに力を入れていますから、映画でもマンガでも、これでもかこれでもかというふうに現実性を出して描くのです。
こういう世界に没頭しているとき、私たちの思考は妄想と現実とをはっきり区別することはしません。区別することに目を向けると、せっかくの妄想の世界を楽しむ興味が半減してしまうからです。ところが、その妄想と現実の区別の認識が欠如するところに、こころの発病の萌芽があるのです。

物語の妄想世界を体験していると、こころのなかにさまざまな感情が揺れ動き、その感情のなかからいろいろな概念が出てきます。その概念が、じつはその妄想世界を楽しむ源になっているのですが、そのぐるぐると回転しているさまざまな概念をそのままほったらかしにしておくのではなく、「どの思考が事実にもとづいているのか」「どの思考がたんなる想像にもとづいているのか」という区別を、しっかりとつけておく必要があるのです。

ちょっとむずかしく思われるかもしれませんが、慣れてみればこれは簡単なことで、このチェックさえ怠らなければ、こころが発病することはまず防ぐことができます。このチェック法は、このあとで詳しくお話ししますが、仏教の瞑想法が解決してくれます。そして、こころの発病を防ぐことのできるこのチェック法は、その瞑想法しかないのです。

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こころのセキュリティ
爆発寸前のあなたを幸せに導く「日夜の指針」 
著者:アルボムッレ・スマナサーラ長老
初版発行日:2002年9月